『エレファント・マン』は、カルトの帝王と呼ばれるデヴィッド・リンチ監督作品です。
医師フレデリック・トリーヴスの回想録を基に、生まれ持って身体に極度の変形を伴う難病を抱えたジョゼフ・C・メリックの生涯と、彼を取り巻く人間関係を監督独自の演出で描いたヒューマンドラマです。
ジョゼフ・C・メリックが実在した時代が1860年代とうことから、映画は全編にわたってモノクロの作品となっています。
また、本作では主人公のファーストネームがジョゼフではなく、ジョンと改名されています。
[予告版動画はこちら]
(2020年に公開された『エレファント・マン 4K修復版』の予告編です)
『エレファント・マン』のあらすじ
19世紀半ば、産業革命真っただ中のイギリスで、階級格差が広がり社会不安も深刻化する中、市民の娯楽は催し物や見世物でした。
王立ロンドン病院の外科医フレデリック・トリーヴスは、見世物小屋の奇形や障害を持つ人たちに興味を持ち、小屋の奥へ奥へと進んでいきます。
そこで彼は興行師のバイツと出会います。バイツは “エレファントマン” と名づけられた見世物について、警察から「障害をモンスターと称する見世物は公序良俗に反する」と公演を断られたところでしたが、トリーヴスはその “エレファント・マン” に強い興味を抱きます。
トリーヴスは、公演を断られた事で渋がるバイツに大枚を払い、“エレファント・マン” ジョン・メリックと出会うのですが、類稀なジョンの奇形に衝撃のあまり涙を流すのでした。
ジョンの障害に興味を持ったトリーヴスは、治療を理由にバイツからジョンを預かり、病院の屋根裏に匿います。そしてトリーヴスはジョンの特異性を学会に発表する一方で、ジョンをもっと知りたいとコミュニケーションを取ろうとし、会話が可能な事を知ります。
そうこうするうちに、ジョンを隠していることが病院関係者の知るところとなり、ジョンをカー・ゴム院長に会わせるトリーヴスですが、ジョンは教えた事しか言葉にしません。
カー・ゴム院長はジョンの知能障害を確信し、これ以上病院で世話をするのは無理だとトリーヴスに伝えます。ところが・・・
『エレファント・マン』の見どころ
見どころと言えば、まず1980年の作品とは思えない、世界観の完成度です。19世紀の雰囲気を出すために全編モノクロになっているのですが、町の背景から登場人物たちの衣装に至るまで、19世紀当時を徹底してリアルに表現しています。この手法は後に「シンドラーのリスト」でオマージュ活用されています。
次に脚本です。単なる「感動する悲劇」ではなく、人の醜さ、本当の善意とは何かを皮肉を込めて描いています。
婦長の一言で自らの過ちに気付くトレーヴス。ケンドールの慰問をきっかけにジョンを慰問する事が流行するのですが、偽善に満ちた富裕層階級の本性。
女王からの親書によって、キリスト教徒としての大義で意に反して強いられる慈善活動。
劇場でジョンに拍手喝さいを送る聴衆たちの違和感…これらのシーンが作品の本質を物語っています。
聡明で純真なジョンと彼を取り巻く人たちとの人間関係、そんな周囲の人たちの人間性と本性…これらの描写がこの作品のテーマになっています。加えて、ジョンの人生が決して悲劇だけではなかった事が、この作品の救いにもなっています。
この作品では「人間の本質」と「本当の善意とは?」が実に見事に描かれています。
『エレファント・マン』の見逃し動画配信サービスは
主要動画配信サービスの9社を調べてみましたが、2021年5月18日現在、『エレファント・マン』が配信されているのはU-NEXT1社だけでした(見放題)。
主な登場人物と作品概要
主な登場人物
※日本語吹替はTBS月曜ロードショーで放送された版
- ジョン・メリック(ジョン・ハート 吹替:国広富之)
本作の主人公。先天的に身体に強い奇形を持っており、その外観ゆえに見世物とされてしまう青年。 - フレデリック・トリーヴス(アンソニー・ホプキンス 吹替:田中信夫)
外科医師。見世物小屋でジョンを見て興味を持ち、興行主から引き取って連れ帰る。 - バイツ(フレディ・ジョーンズ 吹替:熊倉一雄)
ジョンを見世物小屋で使っていた興業主。 - カー・ゴム院長(ジョン・ギールグッド 吹替:渥美国泰)
ジョンが入院する病院の院長。 - ケンドール夫人(アン・バンクロフト 吹替:阿部寿美子)
舞台女優。ジョンに興味を抱き、訪問する。
作品概要
- イギリス・アメリカ共同製作映画
- 【監督】デヴィッド・リンチ
- 【脚本】クリストファー・デヴォア、エリック・バーグレン、デヴィッド・リンチ
- 【製作総指揮】スチュアート・コーンフェルド、メル・ブルックス
- 【音楽】ジョン・モリス
- 【配給】(米)パラマウント映画(日本)東宝東和
- 【公開】(米)1980年10月10日(日本)1981年5月23日
- 【上映時間】24分
- 【言語】英語
映画で描ききれなかったエレファント・マンの真実を、多くの写真と資料で再現したドキュメント。
数量限定スチールブック仕様の4K Ultra HD版。※国内ででは4K Ultra HD版のみ再生可能。同梱のブルーレイはリージョンBのため日本のブルーレイプレイヤーでは再生できませんのでご注意ください。