映画『バベル』を徹底解説!賛否両論だった理由や作品の背景・意味など

日本では賛否両論!? でも、海外では絶賛された名作「バベル」の本質を知ろう!

日本も舞台になったものの日本人キャストの描写に賛否両論が起こった「バベル(BABEL)」ですが、この作品の本質が理解できればまた違った感想を待っていただけるはずだと思い、今回は名作「バベル(BABEL)」を考察したいと思います。
 
[予告版動画はこちら]

目次

そもそも何故日本で賛否両論があったのか?

本作を観た方ならご存知かと思いますが、なかなか解りづらい内容も然る事ながら菊地凛子さん演じる千恵子を取り巻く一部シーンが大胆で刺激の強い演出になっている事が大きな原因でした。
ある意味で誤解を招く演出であった事から、不快感を持った人も多かった様です。

この作品は旧約聖書の創世記がベース!

欧米の作品の多くがそうである様に本作もキリスト教の概念が根幹になっていて、タイトルが「BABEL」となっているところが作品の本質を表しています。
その「BABEL」とは聖書の創世記11章に記述されている「バベルの塔」を指しています。

「バベルの塔」について書かれている内容とは…

バベル村に住むノアの子(人間)たちは、天まで届く塔を建てようと思い立ちお互いに協力し合って巨大な塔を作り始めます。
神の住む天にまで勢力を広げようとする民に怒った神は、塔の建設を出来なくする為にひとつに統一されていた言語を変えてしまいます。

お互いに言葉での意思疎通が出来なくなった民は統制が取れなくなってしまい、塔の建設を断念して世界の各地へと散ってく事となります。
国によって言語が異なる起源とされている記載です。

まずこの作品に描かれている内容を整理しよう!

※(注意)ちょっとしたネタバレを含みます
作品紹介も書かせていただいているので、詳しくはそちらを参考にして頂くとしまして…

登場人物たちは全員同じ言語を使っている同族同志にも拘らず、お互いの関係がうまくいっていません。

夫婦でありながら、失意の事故がきっかけで信頼関係と夫婦関係が破綻寸前だったり、兄弟でありながら、家族関係が原因で争いや言い合いが絶えなかったり、親子でありながら、母親の死と障害が原因でお互いに心を開けなかったり、平穏な生活を送っていたはずが、不法入国であるが故に息子の暴挙が原因で親子の信頼が崩れてしまったり…

全ては想定外に起きた事件や事故がきっかけで、言葉は通じる同じ民族でも気持ちや心は通じ合えない「苦悩」が描かれています。

一方で、言葉が通じず意思疎通が困難な者同士が心を通わせる「救い」も描いています。

  • 思いがけず事件に発展したいたずらが、理解し合えない仲を超えて事の重大さと善悪を知るきっかけとなる「救い」
  • 思瀕死の妻を救おうと仲間たちに協力を求めるも非情な対応を受けた上に窮地に追い込まれた男性に対して、献身的に協力する村人の「救い」
  • 思くすぶる気持ちと感情をどう発散したら良いのか苦悩する聾唖者の千恵子の前に現れ、千恵子だけではなくヤスジロウにとっても「救い」となった刑事の存在
  • 思預かった子供たちの命を危機に晒してしまう絶体絶命の場面で、国家間の問題を抱えた異国の救助隊に奇跡的に救助される「救い」

監督 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥはこの作品で何を描きたかったのでしょう?

アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督は、敬虔なローマ・カトリック信者が多い国でも知られるメキシコの人です。

この作品の舞台はアメリカ、メキシコ、モロッコ、日本の4か国になっているのですが、アメリカはプロテスタント系が多く、モロッコはイスラム教国家、日本は仏教と、4か国とも言語や生活様式はもちろん宗教も思想概念もバラバラなのです。

加えて、作品でも描かれている様にメキシコは長きに亘ってアメリカとの関係は決して良好ではありませんし、モロッコはアメリカの仲裁で戦争を回避できた歴史的背景があります。この点がこの作品の重要なスパイスとなっています。

一見すると関係性が無く全く異なる4か国で起きた「苦悩」と「救い」が線で繋がっていく展開を見せるのですが、この展開の根底が「言語を変えられ世界に散ったノアの子たち」の行く末として描かれています。

この作品の本質とは?

賛否両論となった演出をどう理解したら良いのでしょう?ノアの子たちが抱えたであろう「苦悩」と「救い」が今も尚「人間関係の根幹」である事と、「印象による偏見が誤解を生む根源」である事を描いていると思います。

同じ言葉を遣っていても意思疎通は困難である「苦悩」と、言語が違っても気持ちが通じ合える「救い」の象徴的な場面がメキシコに連れていかれた夫婦の子供たちです。

言葉が通じず習慣も違う地で順応していくふたりの子供たち。
一方、「偏見は誤解の元凶」である事の象徴が千恵子とモロッコでの場面です。

男たちを誘惑するものの障害を理由に受け入れてもらえない千恵子は「ふしだらな娘」と言う外見による偏見の象徴であり、銃で狙撃事件を起こしてしまう兄弟は「イスラム教徒はテロ国家の危険分子である」という偏見の象徴として描かれています。

男たちを誘惑していた千恵子の本性は、突然の母の死を受け入れられず障害を持っている事で鬱積した感情を爆発させようともがいている事が原因ですし、モロッコの兄弟は兄弟間でのつまらない「いさかい」が原因です。

千恵子の苦悩を受け止めようとした刑事は「偏見の裏の本質」を表現するメタファーになっていて、刑事の存在がきっかけで親子関係に変化が起きる事からも、多くの人たちが真相を知らない人や国に対して偏った偏見を持っている事を表現しているのです。

最大の問題提起であるラストシーンの解釈は?

ラストで千恵子が刑事に手紙を渡すのですが、その内容は描かれていません。
監督が手紙の内容を鑑賞者の感受性に託した訳ですが、手紙を読んだ刑事の反応から内容を想像するしかありません(笑)。

あくまでも個人的な分析ですが、作品を通して面々と描かれてきた「心を通わせる事の難しさと千恵子自身が痛感して来た偏見に対する苦悩」が素直に書かれていると思います。

刑事も若い頃に経験した苦悩でもある事から、落ち着いた様子で酒を飲み続けていられたのでは?

気持ちを吐き出し落ち着いた千恵子は感極まって、久しぶりに父親にすがります。その気持ちを美しい夜景と美しい音楽で表現したラスト… とても感動的でした。
 
素晴らしい作品なので、改めて鑑賞してみてはいかがでしょう。

『バベル(BABEL)』の見逃し動画配信サービスは

『バベル(BABEL)』は2021年6月現在、以下の各動画配信サービスで配信されています。

動画配信サービス 配信の有無
U-NEXT 見放題
hulu 見放題
Amazonプライム・ビデオ レンタル 204円〜
FODプレミアム ×
dTV レンタル330円~
NETFLIX ×
TELASA ×
WATCHA 見放題

※料金は消費税を含みます。レンタルは視聴期間の限定と月額とは別に都度課金があります。
 
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作品概要と主な登場人物紹介

作品概要

  • アメリカ映画
  • 【監督】アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
  • 【脚本】ギレルモ・アリアガ
  • 【配給】(米)パラマウント・ヴァンテージ(日本)ギャガ
  • 【公開】(米)2006年10月27日(日本)2007年4月28日
  • 【上映時間】142分
  • 主な登場人物

    • リチャード・ジョーンズ(ブラッド・ピット 吹替:松本保典)
      妻と旅行でモロッコを訪れたアメリカ人。
    • スーザン・ジョーンズ(ケイト・ブランシェット 吹替:塩田朋子)
      リチャードの妻。モロッコで観光バスで移動中に銃撃を受けてしまう。
    • 綿谷安二郎(役所広司)
      娘の千恵子と二人暮らしをする男。妻を自殺で亡くしている。
    • 綿谷千恵子(菊地凛子)
      安二郎の娘。母を亡くし父ともしっくり来ず、自分は聾者で孤独感を抱え暮らしている。

     


    【ご注意】この記事の内容および配信情報は2021年6月17日時点のものです。その後、内容の変更や、配信が終了していたり見放題が終了している可能性がございます。現在の配信状況はサービス各社の公式サイトもしくはアプリをご確認ください。

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この記事を書いた人

映像コンテンツの内容を作成させて頂いているカプチーノと申します。
映画ファン歴35年の映画マニアです。
歴史作品やドキュメンタリー作品が得意分野で、作品の原作をチェックしたり歴史作品は史実との検証もするマニアです。
作品エピソードを絡めつつ、個人的な嗜好よりも客観的な視点で作品の良さをお伝えする様に心掛けています。

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