映画『VICE(バイス)』を考察!背景や伏線の意味を考えてみた

政治不信の今だからこそ超ド級の衝撃作「VICE」の凄みを考察してみました。

2019年からコロナウィルスが蔓延しはじめて以降、コロナ過による政治不信が続いています。

一見何の関係も無さそうな日本での政治不信と映画「バイス」ですが、この作品で監督が訴えている事のひとつが私たちの状況に関係しているので、この作品の内容を分析・考察していこうと思います。

目次

『VICE(バイス)』の背景を考える

タイトルの「VICE」が意味するものは?

この作品はブッシュ政権時に副大統領だったディック・チェイニーの悪行の数々と悪しきサクセスストーリーを描いています。

副大統領は英語で「VICE PRESIDENT」と言うようにVICEは「副」と言う意味なのですが、実は別の意味もあります。

「非行、悪党、クズ、騙し、邪悪」などなど。

このタイトルは、D.チェイニーを表現するに相応しい2つの意味を持ったタイトルが付けられているのです。

ズバ抜けて凄い脚本構成と演出!

開始早々「正確さを求めてベストを尽くした」と言うメッセージが出てくるのですが、原文はWe did fucking best.と作品の内容を示唆する下品な書き方になっています。

その後の5分でD.チェイニーの本性に度肝を抜かれると同時に、がっつり興味を鷲掴みにされます。

しかも、登場人物たちの多くは実在しますが、その誰もが本人と見間違えるほどそっくりです。外見だけじゃなく、仕草やしゃべり方まで。

一般人と思しきカートのナレーションでストーリーが展開していくのですが、D.チェイニーの趣味が釣りであった事が判ります。

このカートと釣りがその後の展開の重要な伏線になっています。

作品の構成

作品は大きく二部構成になっています。堕落人生を送っていたD.チェイニーが奮起して政界進出を果たし、出世するまでが前半。

後半は、彼が政界復帰し副大統領でありながら、「一元的執政府」という悪知恵を入れ知恵され、全権力を手中に収めて史上最悪の権力者にまで昇り詰めるまでを描いています。

前半には、後半に続く伏線がばらまかれているのですが、後半に差しかった頃に「もし副大統領に就任していなかったら家族と平穏に生活していたでしょう」とエンドロールが流れます。

「え?もう終わり?」と思いきや、そうはならなかった!と後半に続きます。

後半はもっと露骨な演出が随所にあります。レストランでゆがんだ政策解釈と権力をオーダーするくだりなどです。

数々の伏線演出が意味することは?

釣り

前半ではあまり意味を成さなかった釣りでしたが、大統領に就任した無能なジョージ・ブッシュからの副大統領のオファーを受けた事で「副大統領に留まらない強大な権力と言う大物を釣り上げる」伏線になっている事が明らかになります。

釣りの餌がジョージ・ブッシュの「無知」なのは言うまでもありませんが、この「無知」が更なる伏線になっています。

ニクソンとキッシンジャーの密室会談

ラムズフェルドがこの会談の真相を明かすのですが、後半にこれと同じ事をチェイニー達が行います。

市民調査と称した隠れ蓑を使いながらメディアを利用し形を変えてはいますが、本質は同じである事をレストランの食事と言う比喩で表現しています。

カップとソーサー

積み重ねられ絶妙なバランスで立っているカップとソーサーはD.チェイニーの正当性の均衡で、そのカップの崩壊はチェイニーがもたらした諸悪や災難を引き起こした事を描写しています。

イラク侵攻を国民に宣言するブッシュの貧乏ゆすり

自らの意思で決定していない戦争への突入を自分で書いていない原稿を読んで宣言する事に大きな不安を感じているブッシュの心理を表しています。

その貧乏ゆすりが戦場で恐怖におびえる一般市民の恐怖の震えの原因となっている元凶こそチェイニーなのです。

ナレーター カートの結末とその真意

ただのナレーターであったカートですが、後半でチェイニーの心臓移植のドナーであることが判ります。

ところがこれで終わらないのがこの作品で、移植するまでに至る経緯が「ある事件」を連想させる物となっています。

ドナーは事前に申請が必要なので、個人情報が医療関係機関に蓄積されています。

超秘密主義で国内の全ての情報を把握していたと言われるチェイニーからしたら、喉から手が出るほど欲しい情報だったに違いありません。

予期せぬ交通事故に遭い死亡したカートが逆さに映し出される映像に見覚えがありませんか?暗殺され病理解剖される前の画像が公開されたJ.F.ケネディーです。

カートはブロンドの白人と言う風貌と工作活動で事故死に追いやられた描写で、ケネディー暗殺のメタファー(遠回しな比喩)になっているのです。

この作品はただの衝撃作ではない!

この作品では、冒頭から思いもよらない暴露が次々と描かれています。例えば・・

  • 初めから着地点がわからないまま強行したベトナム戦争
  • 根拠も証拠も無い大量化学兵器を理由に始めたイラク侵攻
  • 動揺する国民をよそに起きる事を知っていたとも取れる9.11と、同時多発テロのお題目には不自然な証拠の数々
  • 国連でのパウウェル長官の演説の真相


などです。

それにしても、彼がそこまで昇り詰める事が出来たのは彼の能力と運だけでしょうか?
実はその点も序盤に描かれているのです。

選挙に出馬したチェイニーはスピーチも下手で、お世辞にも市民の支持を得られていませんでした。

また、上司ラムズフェルドも、「理念とは?」と問いかけられて「理念なんてあるわけ無いだろ!」と笑い飛ばしてしまいます。
ラムズフェルドは理念もなく地位と保身にしか興味が無い政治家と描かれており、彼を支持するチェイニーも問題ありと思ってしまいます。
(個人的には、私はそこに今の日本の政治家たちが重なって見えます)

そんなラムズフェルドやチェイニーが特権階級に甘んじていられたのは、有権者たちの無知さと政治無関心が原因であると、この映画では描いています。

アメリカ史上最悪なVICEを生み出した一因は有権者にもある・・これは日本の現状にも言えることと思わずにはいられません。

長くなりましたが、この考察で作品と世界の真実に興味を持って頂けたら嬉しい限りです。
 

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この記事を書いた人

映像コンテンツの内容を作成させて頂いているカプチーノと申します。
映画ファン歴35年の映画マニアです。
歴史作品やドキュメンタリー作品が得意分野で、作品の原作をチェックしたり歴史作品は史実との検証もするマニアです。
作品エピソードを絡めつつ、個人的な嗜好よりも客観的な視点で作品の良さをお伝えする様に心掛けています。

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