『ハクソー・リッジ』の特徴や背景を考察!史実も掘り下げてみた

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ただの戦争映画と侮るなかれ!感動作「ハクソー・リッジ」を考察してみました。

この作品は監督がメル・ギブソンということもあってか、公開時に話題になりました。国内外での評価も高く、監督のこだわりと思いが随所に感じられる感動作になっています。

多くの戦争映画は戦場を舞台に繰り広げられる戦闘が作品の軸になっていますが、この「ハクソー・リッジ」は、それらとは一味も二味も違う内容が特徴的で魅力にもなっています。

ちなみにタイトルの「ハクソー・リッジ」とは【弓鋸(ゆみのこ)型をした絶壁】と言う意味で、沖縄戦の激戦地となった前田高地の絶壁を指しています。
 
予告編はこちら

目次

「ハクソー・リッジ」の3つの特徴と考察

この作品は3つの大きな特徴があります。

  • メル・ギブソンが監督をしている
  • デスモンド.T.ドスの偉業と「彼の人間性」を描いた作品であること
  • 戦争映画でありながら、アメリカ贔屓の勧善懲悪になっていない作風

これらを一つずつ考察してみましょう。

1. メル・ギブソン監督作品である

メル・ギブソンは敬虔なクリスチャンで知られていますが、彼は超伝統主義派の信仰者です。

超伝統主義とは、第2バチカン公会議以降の教皇を教皇として認めない超保守的な立場を言います。

一方で主人公のデスモンド・ドスも熱心なクリスチャンなのですが、彼はセブンスデー・アドベンチスト教会の信仰者です。

セブンスデー・アドベンチスト協会とは、プロテスタントの立場を取る新派で原理的な教義を基盤としています。

開教当時は「セブンスデー・アドベンチストのみが唯一の真の教会である」という理念があったことからも、戒律の順守に厳しい宗派と言えると思います。

作品にも描かれているように、彼の偉業の背景にあった敬虔な信仰心に監督が強く惹かれたのが伺えます。作品の随所にその影響が見て取れます。

2. 主人公デスモンドの人間性をも描いている

この作品が単に彼の偉業を描いただけの英雄伝になっていないは重要な点だと思います。

作品の前半は彼の生い立ちから入隊までの変遷と信仰に対する意識が描かれていて、後半になってからは入隊後の彼の信念、戦場での葛藤等が巧みに描かれていて、デスモンドの人間臭さを感じさせます。

3. 偏った勧善懲悪ストーリーになっていない

日本にとっても沖縄戦は、最後の砦となる非常に重要な戦闘でした。

そのため、何としてでも死守しなくてはならない「死に物狂い」の戦闘であった事からもまさに地獄絵図でした。

アメリカ軍からしたら「日本軍は死を恐れない、決してあきらめない」と言わしめるに十分足る激戦だったようです。

痛々しいまでのリアルな描写で知られるメル・ギブソン監督作品

この作品では、敵対する日本兵隊たちの「決死の覚悟」と「戦争の悲惨さ」がリアルに描かれていて、「日本兵=ただのヒール(悪者)」としては描かれていません。

デスモンドが負傷した日本兵も助けていて、敵対する日本兵も人間として描かれていることからも、監督の日本兵に対する敬意の様な物を感じ取ることが出来ます。

この作品が他の戦争映画と違う点は?

最大の理由は、脚本と演出に監督の宗教理念が大きく反映されている点だと思います。

ラストでは、悲惨な戦場なのに対極にある神々しい場面が登場するのが象徴的ですし、戦場でのシーンは全体の半分にも満たないと思います。

それでも戦争の悲惨さを訴えるには十分な描写が詰まっているのは監督ならではだと思いました。
かと言って、悲惨さばかりを描いていないのはとても特徴的だと感じました。

作品の背景と史実を掘り下げてみました

この作品は監督の企画ではなく、作品の制作企画が先にあってメル・ギブソンにオファーがあったようです。製作と撮影はオーストラリアを中心に行われました。

総じて作品への評価は高く、ローリング・ストーン誌の有名評論家は「『ブレイブハート』と『プライベート・ライアン』以来、最も暴虐で血まみれた殺戮」と評価しています。

沖縄戦とは、世界大戦末期の1945年(昭和20年)に、アメリカとイギリスの連合軍が沖縄に上陸した際の戦闘を指します。

敗戦が濃厚であった日本にとって沖縄戦はとても重要な意味を持っていて、「沖縄の死守」が司令部からの厳命でした。

そのため、賀谷支隊の名で知られる部隊や「伊予の肉弾連隊」の異名を持つ部隊などの強者部隊が戦闘に参戦していた事から考えても、地獄絵図の激戦になったであろう事は想像に難くありません。

民間人を多く巻き込み、戦後にも大きな傷跡を残した事でも知られる沖縄戦が舞台になっているので、日本人としても戦闘シーンには特別な心情を持つ作品であると思います。

この作品を観て

史実ベースの伝記作品なのでヒューマンドラマの側面もありつつ、戦争の悲惨さや極限の状態で人道的な信念を貫いた偉業の凄さも感じる多面性を持った作品だと思います。

あくまでも個人的な感想ですが、単に「わがアメリカ軍が憎き日本軍相手に戦った大戦で偉業を成し遂げた英雄の話」で終始していないところにとても好感が持てた作品でした。

あなたならどう感じますか?

 

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