カプチーノ隠れた名作「ホテル・ムンバイ」をより楽しむために色々と考察してみました。
とても良い作品なのに、日本じゃあまり話題にならず、上映期間が短くて隠れた名作になってしまう・・そんな映画って結構多いもの。「ホテル・ムンバイ」もそんな映画のひとつです。
良い作品だからこそ、一人でも多くの方とその良さを共有できたらと、考察・分析をしてみました。
[予告版動画はこちら]
まずは作品の背景を知ろう!
「有名監督が事実を基に制作した作品」として公開されると一気に話題になるものの、99%の作品は事実とは相違するフィクション作品に仕上がります。
ではこの作品はどうなのか?背景を掘り下げてみました。
監督はアンソニー・マラスという新進気鋭のオーストラリア人監督で、代表作が「ホテル・ムンバイ」となっている事から実質的な映画監督のデビューは本作の様ですが、実は2011年にトルコのキプロス侵攻を題材にした『THE PALACE』という短編作品で才能を知られた人でした。
製作はアメリカ、オーストラリア、インドの合同製作になっています。
「ムンバイ同時多発テロ」を描いた作品とされていて、舞台となったホテルは駅や複数の場所が被害に遭ったテロ現場のひとつでした。
ホテル名も正しくは「タージマハル・ホテル」で、ホテル・ムンバイというホテルは実在しないようです。
このタージマハル・ホテルは世界の政治家・王侯貴族・有名人たちを顧客に持つインドを代表する高級ホテルです。インド最大の財閥タタグループの創始者ジャムシェトジー・タタがホテルで人種差別を受けた経験から、インド人だけで創設したとされています。
彼は事業で成功をおさめ「インド近代工業の父」と呼ばれ実業家、タージマハル・ホテルは日本で言うなら「ザ・ニュー・オータニ」と言ったところでしょうか。(ザ・ニュー・オータニも「鉄鋼王」と呼ばれた実業家 大谷米太郎氏の創業)
描かれている「ムンバイ同時多発テロ」とその背景を知ろう!
2008年11月26日夜から11月29日朝にかけてイスラム過激派と見られる勢力がインドのムンバイで外国人向けのホテルや鉄道駅などを襲撃し、172名以上の市民が死亡し239名の負傷者を出したテロ事件です。そのうち、外国人の死亡者は34名とされています。
標的となったのはホテルの他に、駅、病院、レストラン、映画館など10か所にも及ぶそうです。
一般的にテロ事件と言うと「イスラム過激派」「アルカイダ」などイスラム教は危険分子が多い印象を受ける人も多いと思いますが、これは大きな誤解を生んでしまっています。
この事件の根幹には、宗教問題だけではなくインドとパキスタンの国際問題の根深さが関係していると言われています。
イギリス領だったインド帝国が独立をしてインドが建国される際に、ヒンドゥー教とイスラム教の宗教問題でインドとパキスタンの2国に分裂した歴史背景があります。
ちなみに、当時のパキスタン政府はテロ事件への関与と宗教問題を否定しています。
事件はタージマハル・ホテルに最後まで潜伏していたテロリストを軍事治安部隊が制圧した事で終結となりました。
「ホテル・ムンバイ」が必見の名作である理由を検証してみました。
テロ事件を題材にした作品は数多くあり、そのほとんどが被害者と凄惨さだけに視点を置いた「勧善懲悪」が定番で、犯人の人物像や犯行に至る背景が描かれている事はありません。
ところがこの「ホテル・ムンバイ」では、テロ事件を起こす犯行グループと犯行メンバー個人の人物背景や葛藤、焦燥感、個人感情が実に丁寧に描かれています。
他の作品では犯人が「悪の権化」でしかないので、観ている側も負の感情しか沸かないのが、この作品では「事件を引き起こした犯行への感情」と「犯人個人への感情」にズレを感じると思います。
その理由がこの作品の真骨頂となっているので、テロを描いた作品としてだけではなく「国際情勢に翻弄される市民」を描いたヒューマンドラマの側面を持っている事に気付くと思います。
多くの名監督が口を揃えて言っている「脚本」と「人物描写」が、この作品では両方とも素晴らしいのです。
大好きな作品ですが、できるだけ客観的に分析したつもりです。
「ホテル・ムンバイ」を鑑賞する時の参考にして頂けると嬉しい限りです。
