『八つ墓村』は小説家 横溝正史の同名小説の映画化作品です。
同名の映画はまず1951年に松田定次監督・片岡千恵蔵主演で映画化されました。
今回ご紹介するのはその1951年作品に続く、1977年に公開された映画化『八つ墓村』2作目です。監督は野村芳太郎、主演の金田一耕助を演じるのは渥美清です。
(さらに1996年公開の、第3作八つ墓村もあります。こちらは市川崑監督、豊川悦司・浅野ゆう子主演です)
この映画は松竹作品では歴代に残る大ヒットとなった作品で、「本陣殺人事件」「獄門島」と並んで「岡山三部作」と言われています。
戦時中、岡山の山村に疎開した横溝本人が、疎開先に残る因習にインスパイアされて書き上げたとされる小説が原作になっています。
[予告版動画はこちら]
『八つ墓村』のあらすじ
※なお、本作中では名字を「田治見」でなく「多治見」と表記していますが、原作と他の『八つ墓村』では「田治見」となっており、記事中では「田治見」と表記します。
1
空港で空港誘導員として働く天涯孤独の寺田辰弥。彼のもとに、新聞の尋ね人の掲載を通じて見知らぬ老人が会いに来ます。
ある山村からわざわざ辰弥を探しに来たその老人は、辰弥のやけどの跡を見て本人であることを確認しますが、それもつかの間、その場で突然謎の死を遂げてしまいます。
天涯孤独と思っていた辰弥でしたが、その老人・井川丑松との出会いから、自分は八つ墓村の田治見家の血縁関係であるということが判ります。
そして辰弥は生れ故郷の「八つ墓村」に帰ることになります。
2
田治見家では、後継ぎ問題が一族で持ち上がっていました。
主人の田治見久弥が重い病で余命いくばくもない状態で、子供もいないため、腹違いの弟である辰弥が田治見家の後継者とされていたのです。辰弥はそれを聞いて驚きます。
辰弥は父方の親戚筋の未亡人である森美也子から、この八つ墓村にまつわる悲しい過去を知らされます。
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時は遡り戦国時代の1566年。毛利との戦に負けた尼子家の武者たち8人がこの地に逃げ込み、山奥の山村に入ります。
村民たちも最初は歓迎して向かい入れたのですが、毛利の追手の捜索が厳しさを増し、さらに懸賞金がかかるとそこに目がくらみ、武者たちを裏切って皆殺しにしてしまいます。
武者の一人が死に際に「子々孫々の代までこの村を祟って忘れない」と言い残したため、祟りを恐れた村人が彼らを祀った「八つ墓明神」を建立します。
その神社が由来してその村はいつしか「八つ墓村」と呼ばれるようになりました。
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八つ墓村の権力者であった田治見家は、落ち武者殺害を首謀した田治見庄左衛門の一族で、辰弥はその末裔だったのです。
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そして、まるで辰弥の帰郷と合わせるように、この田治見家で次々と凄惨な事件が起きてしまいます。
実は田治見家では過去にも殺人事件がありました。それは辰弥の父である田治見要蔵が起こした事件で、ある時、妻を斬殺した上に、村人32人を次々と村人を殺害して失踪してしまった、というものです。
その時と同じく今回の事件も「これは落ち武者の祟りが原因」だとまことしやかにささやかれ始めます。
そして調査依頼を受けた金田一耕助が八つ墓村を訪れます。
田治見家の相続問題と並行して起こった殺人事件の謎に、金田一耕助がどう立ち向かうのか・・。
そしてもう一つ、最大の見どころが、田治見家の先代当主 要蔵を演じた山崎努の怪演です。結核の病が原因で人生を悲観した要蔵が、村人32人を次々と殺害していくシーンは狂気そのもの。ぜひ観てみてください!
お勧めポイント
この作品は昭和13年に実際に起きた「津山事件」と、日本の因習がモチーフになっているところが最大の魅力になっています。
大っぴらには語られることが無く、真相が闇のままの事件が背景になっている事がミステリー絶妙なスパイスになっています。
何度も映画化されている「八つ墓村」ですが、この作品の大成功した事が頷ける最高傑作亨仕上がっています。
『八つ墓村』の見逃し動画配信サービスは
ここでは『八つ墓村(1977年・野村芳太郎監督)』と『八つ墓村(1996年・市川崑監督』)の2つの『八つ墓村』の配信情報を記載しておきます。残念ですが1951年の松田定次監督版は配信はありませんでした。(2020年11月現在の配信状況です)
動画配信サービス | 八つ墓村(1977年) | 八つ墓村(1996年) |
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※情報は2020年11月5日現在のものです。料金には消費税を含んでいます。
※レンタルとは、月会費とは別にそれを観る時に別途課金されるもので、各サービスにより2日間~7日間程度の視聴期間が設定されています。
主な登場人物と作品概要
主な登場人物
- 関大助(神木隆之介)
金田一耕助(渥美清)
この作品の主人公で、私立探偵。大阪で井川丑松が毒殺された件について調査を依頼される。いろいろ調べる中で岡山の八つ墓村に行き、この地の血縁を調べるとともに、28年前に32人が殺害された事件との関係を探っていく。 - 寺田辰弥(萩原健一/少年時代:吉岡秀隆)
天涯孤独だと思っていたが、ある時、田治見家の後継ぎであることがわかる。自分の出生の秘密を知るために八つ墓村へ行くが、連続殺人事件に巻き込まれていく。 - 井川丑松(加藤嘉)
辰弥の母方の祖父。会ったことのない孫の辰弥を探していた。やっと大阪で辰弥と会って喜ぶのもつかの間、何者かに持病の薬に毒を混ぜられ殺害されてしまう。 - 森美也子(小川真由美)
八つ墓村の森家の未亡人で、辰弥を八つ墓村まで案内する。その後も田治見家と辰弥の間をいろいろ取り持つ役回りをする。 - 田治見久弥(山崎努)
辰弥の異母兄。田治見家の現当主だが、重い病にあって余命が短いことを悟り、跡継ぎを任せたいと辰也を探す。薬に毒を混ぜられて殺害される。 - 田治見要蔵(山崎努が二役)
辰弥達の父親で、田治見家の前当主。妻子がありながら井川鶴子に恋をし、家の離れに拉致監禁した上に妾になることを強要した。その後鶴子は失踪するが、それをきっかけに要蔵は狂い、妻を斬殺、さらに村の住人32人も殺害し、行方不明になる。 - 井川鶴子(中野良子)
辰弥の母親。かつて八つ墓村の郵便局で働いていた。田治見要蔵に見初められ、連れ去られ監禁され、無理矢理妾にされる。 - 田治見春代(山本陽子)
辰弥の異母姉。辰也に父である田治見要蔵の過去について語る。連続殺人事件の7番目の犠牲者となる。
作品概要
- 【監督】野村芳太郎
- 【脚本】橋本忍
- 【原作】横溝正史
- 【製作】野村芳太郎、杉崎重美、織田明
- 【音楽】芥川也寸志
- 【配給】松竹
- 【公開】1977年10月29日
- 【上映時間】151分
角川文庫版の『八つ墓村』。角川 “金田一耕助ファイル” 全22巻の1番目です。
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この映画のオリジナルサントラ盤は今は手に入らない模様ですが、SMD itakuから発売されている「あの頃映画サントラシリーズ」で聴くことができます。音楽は芥川也寸志氏が担当。
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