\ ラストエンペラーが見れる /
中国最後の皇帝・溥儀の数奇な生涯を描いた映画『ラストエンペラー』。
アカデミー賞9部門受賞の歴史的名作として知られながら、「歴史の知識がないと難しそう」「長すぎて挫折しそう」と感じて、なかなか手が伸びない人も多いのではないでしょうか。
実はこの作品、難解な歴史映画ではなく、ひとりの人間の視点から世界を見つめる、深く感情に訴えるエンタメ作品でもあります。
本記事では、『ラストエンペラー』が「なぜ感動するのか」「どう観ればわかりやすいのか」といったポイントを、映画初心者でも楽しめる視点からやさしく解説します。
長編映画が苦手な方でも、きっとこの映画がもつ本当の魅力を感じられるはずです。
『ラストエンペラー』の基本情報とあらすじ
清朝最後の皇帝としてわずか3歳で即位し、激動の20世紀を生き抜いた愛新覚羅溥儀(ふぎ)。
『ラストエンペラー』は、彼の壮絶な人生を通して、中国の王朝時代から現代までの歴史のうねりを描いた作品です。
歴史に翻弄されるひとりの人間の姿が、圧倒的な映像美とともに綴られており、映画ファンからも高い評価を受けています。
映画の制作背景と公開
『ラストエンペラー』は、イタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチが監督を務め、1987年に公開されました。
最大の特徴は、中華人民共和国の協力を得て、実際の紫禁城(故宮)で初めて全面撮影が許可された外国映画であることです。
この映画は、東洋と西洋の視点を融合させた国際共同制作であり、イギリス・イタリア・中国の三か国が出資しています。
主な撮影地は北京の故宮をはじめ、長春、天津、瀋陽などの歴史的建造物。これにより、溥儀の人生と歴史の舞台がリアルかつ壮麗に再現されています。
また、映画音楽には坂本龍一が起用され、デヴィッド・バーン、コン・スーとの共同作曲でアカデミー作曲賞も受賞。
歴史と芸術が融合した圧巻の一作として、アカデミー賞では作品賞を含む計9部門を受賞しました。
ラストエンペラーのあらすじ
『ラストエンペラー』の物語は、満洲国崩壊後、戦犯として収容所に収監された溥儀の回想から始まります。
そこから彼の人生が断片的に描かれ、時代を前後しながら進行していきます。
3歳で清の皇帝として紫禁城に即位した溥儀は、まもなく辛亥革命によって退位。
しかし形式的には皇帝として故宮での生活を続けます。
やがて国外との接触を経て、西洋的価値観を取り入れた近代的な教育を受けるようになり、孤立と自由のはざまで揺れる姿が浮き彫りになります。
やがて彼は日本の支援のもと傀儡国家・満洲国の皇帝に即位しますが、第二次世界大戦の敗戦とともに日本が崩壊。
ソ連軍に拘束され、中国国内の収容所で「再教育」を受けることになります。
戦後は一般市民として生きる道を歩み、最後は北京植物園での慎ましい日常へ。
この映画は、「皇帝」でありながら自らの人生を選べなかった男の数奇な運命を、冷静かつ壮大に描いています。

ラストエンペラーはどこが難しく感じるのか?
『ラストエンペラー』は映像美や音楽の評価が高い一方で、「難しい」と感じる視聴者も少なくありません。
なぜそう思われがちなのか、主な理由を見ていきましょう。
歴史知識が前提に見える
この作品は、清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀の激動の人生を描いていますが、彼の生涯は中国近代史そのものともいえるほど複雑です。
中華民国の成立、日本の満州国建国、中華人民共和国での裁判と収容。
それぞれの出来事の背景にある歴史を知らずに見ると、場面転換の意味や人物の行動の重みが伝わりにくく、物語を追うだけでも疲れてしまうという声も多くあります。
特に、「なぜ溥儀が日本に協力したのか」「なぜ中華人民共和国で裁かれているのか」といった場面は、歴史的な前提知識があることで初めて深く理解できる内容です。
歴史を知っていればいるほど面白い一方で、知識がないと置いていかれてしまう。
この点が難しく感じられる一因でしょう。
言語・美術・尺の長さがハードルに
『ラストエンペラー』はイタリア・中国・イギリスの合作映画で、主に英語で制作されています。
舞台が中国であるにもかかわらず、登場人物が英語を話す点に違和感を覚える人もいます。
また、衣装やセット、美術が非常に豪華で視覚的な魅力は抜群ですが、そのぶん映像に見惚れてしまい、物語の進行がつかみにくくなることも。
映像詩のようなシーンが多いため、「何が起きているのかよく分からない」と感じる視聴者も少なくありません。
さらに、本編は約2時間40分にも及ぶ長尺。
淡々と描かれる人生の時間経過に集中力が持たず、途中で挫折してしまったという声もあるでしょう。
こうした要素が重なることで、「難しい」「理解しづらい」と感じられる映画になっているのです。
『ラストエンペラー』は徹底した“溥儀の目線”で語られる
映画『ラストエンペラー』が他の歴史映画と大きく異なるのは、あくまで「ひとりの人間としての溥儀」に視点を固定して描かれていることです。
彼は、激動の20世紀前半を生きた最後の皇帝でありながら、政治の主導者としてではなく、時代に翻弄されたひとりの人間として描写されています。
映画は、溥儀の幼少期から収容所での改心、晩年の静かな生活までを描いており、そのすべてが彼自身の視点で語られます。
回想という形式をとっているため、ストーリーは時系列を行き来しますが、その構成も彼の記憶と心情に寄り添っているのが特徴です。
たとえば、紫禁城の華やかな宮廷生活と、満州国皇帝としての孤独、そして収容所での屈辱的な体験。
これらが一貫して「溥儀にとってどう映っていたか」を中心に描かれており、観客もまた彼の内面を追体験する構成になっています。
そのため、「時代の解説」や「他国の視点」などはあえて描かれず、あくまで彼の主観が最優先。
これが作品を歴史映画というよりも“人物映画”として成立させている大きな要因です。

視覚・音楽が物語を深める
『ラストエンペラー』は、その壮大なスケールと重厚な人間ドラマにふさわしく、視覚と音楽の両面で極めて高い芸術性を誇ります。
溥儀の人生を描くうえで、映像と音が単なる装飾ではなく、彼の内面や時代の空気を語る語り手として機能しています。
色彩と構図が語る感情
本作の撮影監督ヴィットリオ・ストラーロは、光と色の演出において名高い巨匠です。
特に印象的なのは、紫禁城での鮮やかな朱色や黄金の光景と、収容所での灰色やくすんだ色調との対比。
これにより、皇帝としての栄華と囚人としての転落が、視覚的に明確に描かれています。
また、人物の配置やカメラアングルにも意味が込められており、たとえば幼い溥儀が広大な宮殿の真ん中にぽつんと立つ構図は、彼が「皇帝」という存在でありながら孤独な存在であることを象徴しています。
物語を言葉で説明するのではなく、視覚で感情を語るその技法は、映画ならではの表現力と言えるでしょう。
坂本龍一らによる音楽の意味
音楽は、坂本龍一・デヴィッド・バーン・コン・スーによる共同制作であり、東洋と西洋の響きを絶妙に融合させたサウンドトラックが特徴です。
とくに、坂本龍一によるメインテーマは、哀しみと尊厳をあわせ持つ旋律で、溥儀の人生そのものを象徴しているかのようです。
重厚なストリングスに加え、雅楽のような音や中国楽器の響きが随所に織り込まれ、歴史的背景と文化的空気を効果的に伝えています。
音楽は場面ごとの感情を繊細に補強し、言葉では表現しきれない“感情の余白”を埋める役割を担っています。
初心者におすすめの見方・楽しみ方
『ラストエンペラー』は「難しそう」と敬遠されがちな映画ですが、じつは初心者こそ楽しめるヒューマンドラマでもあります。
細かい歴史知識がなくても、人物の感情や視覚・音楽演出を通じてストーリーに引き込まれるはずです。
ここでは、映画初心者が無理なく楽しむための視点やおすすめの鑑賞方法を紹介します。
歴史の細部は気にしなくてOK
『ラストエンペラー』は中国の激動の近代史を背景にしていますが、すべてを正確に理解する必要はありません。
主人公・溥儀の目を通して語られるので、あくまでも「ひとりの人間の人生の浮き沈み」として楽しめます。
彼の無力感や孤独、権力からの転落といった感情面に注目すれば、時代背景を細かく知らなくても十分に共感できるはずです。
まずは、流れる映像や登場人物の表情から感じ取れる「空気感」や「雰囲気」に身を委ねてみましょう。
まずは劇場版で十分
『ラストエンペラー』には、通常の劇場公開版(約165分)と、未公開シーンを追加した完全版(約220分)が存在します。
映画に不慣れな方には、まず劇場版から見るのがおすすめです。
劇場版でも溥儀の波乱の生涯は丁寧に描かれており、映像美や音楽、演技の力で物語の核心に触れられます。
いきなり完全版に挑むと長さに圧倒されてしまう可能性があるため、最初は短めのバージョンで全体像をつかみ、その後に興味があれば完全版で深掘りするというステップがおすすめです。
『ラストエンペラー』は感覚で味わう映画
『ラストエンペラー』は、一見すると難解に思われがちですが、歴史の予備知識がなくても映像や音楽、演出の力によって十分にその世界観を堪能できる作品です。
とくに溥儀という一人の人物の視点に寄り添う構成によって、複雑な時代の流れや心の移ろいが自然と伝わってきます。
細かい背景を理解していなくても、画面に映る色彩や登場人物の表情、音楽の響きが物語の感情をしっかりと補ってくれるため、映画初心者にもおすすめできる一本です。
まずは肩の力を抜いて、感覚で受け止めるつもりで楽しんでみてください。
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